ぶんかびとレポート

ペリーさんもご覧に?下田の紫陽花をたずねて

歴史と情緒がある南伊豆の下田に行ってきました。

 今回は伊豆半島まで足を伸ばし、歴史と情緒を感じつつ、下田公園あじさい祭りに行ってきました。

 南伊豆に位置する下田市は言わずと知れた、ペリー来航の地です。その歴史深い場所を見下ろすかのように、下田公園は下田港を望む岬にあります。別名城山公園とも呼ばれる自然公園で、紫陽花の他、春にはツツジ、冬には椿が咲き誇る、ロマンチックな公園です。さらに園内には開国記念碑やカーター記念碑、下岡蓮杖の碑などがあり、散策しながら下田情緒も満喫できます。

下田に上陸したマシュー・ペリー提督は日本に開国を求めました。

傘と長靴と紫陽花

 この日は時々雨まじりの曇り空、お気に入りの傘を片手に、半ば無理矢理!?長靴をチョイス。ぎりぎり紫陽花に似合うお天気の中、気持ちを高めつつ公園へと向かいます。事前情報では2分咲きとのこと。あまり期待はしていなかったものの、やはり「あじさい祭り」との看板を見ると、期待がふくらみ、自然と気分も高揚。足取りも軽やかに、ゆるやかな坂道を歩きます。

 と、すぐに大きな園内の大型マップを発見。その横に小さく手作りの看板が。「ただいま5分咲きです」えーそうなの!けっこう咲いているし綺麗じゃん〜そういえば学生の時、友だちが「何事もはじめから期待しすぎないほうがいいよ」って、言ってくれたっけ…。少しだけ得したような気がして、そんなたわいもないことを考えながら、まだ咲ききっていない若い紫陽花に、夢中でシャッターを下ろすのでした。

あじさいまつりの看板

紫陽花は五部咲き

 

公園に咲き誇る数えきれないパステルカラーの紫陽花

 遊歩道沿いの色とりどりの紫陽花は、薄い水色に淡いピンク、青みがかった紫、白に黄緑が入ったものなど、優しいパステルカラーで美しいグラデーションを織りなしていて、まるで繊細な水彩画のようです。最後に現れた、丘の斜面一面に咲き誇る数えきれない紫陽花。なんと15万株200万輪!まさに祭りのフィナーレを飾るのに十分な美しさです。

入ったとたん紫陽花がいっぱい

ピンクの紫陽花

ジミー・カーター元大統領と紫陽花

純白の紫陽花

ハトと紫陽花

裸婦と紫陽花

公園から見た下田の町

まだ咲ききっていないので小さいです

丘一面に咲いています

散策路には人がいっぱい

パステルカラーで水彩画のよう

紫陽花は日本原産の花

 さて、紫陽花とは、日本原産の花。現在一般的に植えられているのは、セイヨウアジサイです。日本のガクアジサイが、江戸時代にヨーロッパへと伝わり、改良して作られたました。

 日本では少なくとも奈良時代からあるようで、万葉集では二首詠まれています。しかし、平安文学の中では名を見ることはできません…。色が変わることが心と結びつけて考えられ、不道徳な花という烙印を押されていたからなのだとか。現在でも、古来からのイメージのためか、花言葉は「移り気」「心変わり」となっています。

 昔は目立たなかった花がヨーロッパでは珍重され、日本に逆輸入されたというのですから、愉しいですね。

こちらはフランスで咲いている紫陽花。ヨーロッパでも絵になりますね。photo by 後藤初美

 それから、紫陽花には毒性があり、人が口にすると死に至るというから、意外と侮れません。ぜったい食べちゃだめ!

 そんな紫陽花ですが、私自身は非常に好きな花です。しとしとと雨が降る庭に咲くパステルカラーの紫陽花は、まさに日本の梅雨の風景です。子どもの頃、長雨で外に出られず、何となくブルーな気持ちで窓から外に目をやると、すみのほうで控えめにそっと咲く紫陽花を良く眺めていたなあ……と。ひとりノスタルジックな気分になります。今度は満開の、雨露に濡れた紫陽花を見に行こうと思います。

 

文/写真:中谷沙耶