ぶんかびとレポート

ちょっと恐いかも。岩井洞観世音御堂

小ぢんまりとした味のある御堂

 群馬県の有名な温泉地「草津温泉」に向かう長野街道(国道353号線)沿い、渋川市の村上というところに岩井洞観世音御堂というお堂がある。 古いドライブインの真ん前で、「岩井洞」とだけ書かれた小さい標識が目印である。

スルーしてしまいそうな小さな標識

 もの凄く切り立った崖があり、その下に小ぢんまりと小さなお堂がある。 よくあるお寺やお堂は、階段を登ったり、少し歩いたところにあるものだが、ここは国道からすぐに見えるところに建っているのだ。 とにかく小さくて崖の下にお尻を突っ込んだような格好で建っているので、ちょっとかわいいのだが、崖が急勾配過ぎて、石でも落ちてきたら・・・とちょっと恐いような気もしてくる。

切り立った崖

崖の下に食い込むように建てられたお堂

 

味わい深い、小さな舞台

 お堂は沢山の柱で支えられた構造になっており、この造りのことを懸造(かけづくり)、又は舞台造と言う。 舞台造の有名な建造物は清水の舞台で有名な京都の清水寺がある。 岩井洞はそれと比べるとかなり小さい舞台な訳だが、お堂の右側に階段があり、登ることができる。

右脇の階段から上に登れる

 予想通りだが、登ってみても大して高くはないので、余程の高所恐怖症でもない限り恐くはない。 清水の舞台ならぬ岩井洞の舞台は小ぢんまりとしていて狭く、登って良く見るとかなり古びたお堂の柱は壁は、とても味わい深い雰囲気を持っている。

とても狭い舞台

天井や壁には大量の札が貼られている。

高くは無いので景色は普通。ドライブインがすぐそこ。

洞窟の石仏

 岩井洞の舞台の反対側の階段を降りると、そこには奥行き5〜6m程の洞窟があり、そこには何体もの石仏が安置されている。 ヒンヤリとした洞窟の空気と寂しく佇む石仏に、少し恐い気持ちにさせられる(お地蔵さんなので、恐い訳はないのだが)。

反対側の階段を降りた先には洞窟が

洞窟には石仏がある

近くで見ると、沢山の石仏があるのがわかる。暗い上に洞窟の壁と石仏が同化しているようでちょっと恐い。石仏は30体程安置されているのだそうだ。

 この岩井洞観世音御堂。 1073年に岩井堂城主山田太郎為村によって建てられたと伝えられているらしく、その後1350年に藤原季長が再興したのだそうだ。 1073年というと平安時代、再興された1350年は南北朝時代だ。 どおりで古い訳である。 今は、毎年4月18日に祭典を行っているのだそうだ。

 通常、温泉街に行く通り道として素通りしてしまいそうなスポットだが、立ち寄ってみるとなかなか興味深いものに出会えるものである。 看板には「岩井洞」とだけしか書かれていない訳だが、旅の途中にこういう小さいスポットに立ち寄るのも、日本を愉しむには良いのではないだろうか。

 

文/写真:松端秀明