静岡千頭「猿並橋」 高くて、恐くて、味わい深い。田舎吊り橋 田舎吊り橋16本目。静岡千頭「猿並橋」

田舎吊り橋16本目。静岡千頭「猿並橋」寸又峡の吊り橋第二弾。猿が渡る吊り橋。

秘境「寸又峡」にある吊り橋2本目。猿が並んで渡る猿並橋

前回紹介した「夢の吊橋」に行く途中の遊歩道から遥か下のほうに小さく見えるのが今回紹介する「猿並橋」。 猿並と書いて「さんなみ」と読む。 大井川の支流である寸又川に掛かる吊り橋で、登山家に人気の朝日岳(標高1,820m)から降りて来たニホンザルの群れが一直線に並んでこの吊り橋を渡るのだと言う。 夢の吊橋を目指す観光客は、上から眺めるだけの猿並橋だが、その場の風景を紹介しよう。

吊り橋以外の危険を感じる

夢の吊橋へ向かう広い遊歩道の入り口の脇に、下って行く別の遊歩道があり、そちらにどんどん行くと猿並橋に到着する。 そこには観光客も訪れるからか、きちんとした表札があり、英語や韓国語、中国語でも名前の表記があった。 しかしそのすぐ横には「熊出没注意!」の貼り紙が! 観光客が来るようなところとは言え、ここは秘境中の秘境の寸又峡から遊歩道を歩いて山に入った所。 熊が住んでいるのだ。 そしてそのすぐ上にはサイレンの注意書き。 これは上流にあるダムから放流があった場合に鳴るサイレンの説明なので、川に降りなければ大丈夫だ。

深い山に開けた寸又川

深い山中にある吊り橋だが、山の吊り橋によくあるジメジメした感じではなく、山の間に大きく開けた谷を流れる寸又川を太陽の光が照らし、踏み板などはカラッカラに乾いている。 流石は雄大な流れで有名な大井川の支流だけあって、これだけの山奥にも関わらず川幅は広い。 そこを渡す猿並橋の長さは96m、高さは11mなので、人気の高い夢の吊橋よりも長くて高い。 橋の形状は夢の吊橋と殆ど同じで、踏み板は細めの板を二枚使った形状で幅は40〜50cm程しかない。 この地域の吊り橋はこの細さが特徴だが、これは積雪対策なのだそうだ。 踏み板こそ細いものの、主塔やワイヤーを固定してある柵の棒の部分は金属なので安心感はある。 ただちょっと見た目が味気ない気もする。 大人気の夢の吊橋はこの部分も木製だった。

実際渡ってみると、これは意外。 頑丈な造りなので危険は全く感じないものの、なかなかの揺れで、夢の吊橋よりも恐いような気がした。 それもそのはず、夢の吊橋は10人までだったのに対して、猿並橋は4人までしか同時に渡れない。 つまり、それだけ貧弱ということで、揺れるのだ。

「ナルホド、ここを猿が並んで渡るのか。」などと思いながら足を進める。 ふと横を見ると、吊り橋の脇には小さな小川が流れていて、小さい滝を作っている。 これはよくあることで、遊歩道の脇に流れている小川が吊り橋の手前で川にぶつかって滝になるのである。 足元を流れる寸又川は川幅は広いものの水自体は少なく、殆どが河川敷になっている。 恐らく雨が降ると増水して上流のダムが放水をし、ここが全て水で埋まるのだろうが、想像すると恐ろしくなる。 長い吊り橋を渡り終えると、そこには「ここから先は、登山道です」という看板が立っていた。 「ここから先はハイキングの域を超えますよ〜」という意味なのか。 そして、こちら側の主塔にも貼られた「熊出没注意!」の看板を見て、また恐くなるのであった。

記事:松端秀明/飯田澄人

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夢の吊橋へ行く遊歩道から見下ろした猿並橋。

 
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猿並橋に向かう途中の道に出たジムグリの子供。ジムグリは毒もなく大人しい蛇だが、この辺りにはマムシも出るので注意。

 
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猿並橋の表札。すぐ横には「熊出没注意!」の貼り紙が。

 
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5人以上の通行禁止。ということで、4人まで。

 
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主塔は太くて頑丈な金属製。ダム放流時のサイレンの注意書きもある。

 
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踏み板は細いものの、かなりしっかりしている。

 
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広く開けた寸又川。

 
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すぐ足元に流れ込む小川の滝。

 
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横方向に組まれた角材もかなり頑丈。

 
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なかなかの長さ。うっそうとした森の中に繋がっている。

 
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振り返ったところ。太陽の光が当たって踏み板が眩しい。

 
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少し進んだ所から小川の滝を振り返る。本当に小さい滝だ。

 
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見上げると、夢の吊橋への遊歩道のガードレールと電柱が見える。あそこから見下ろしたのが「01」の写真。

 
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下流方面。大きく蛇行している。

 
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上流方面は右側に大きくカーブしていてその先は見えない。

 
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水が流れている所。水深は浅い。

 
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渡りきったところは主塔を支点に下り坂になっている。

 
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こちら側の主塔にも「熊出没注意!」

 
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「ここから先は、登山道です。」の看板。朝日岳を目指す登山家はここから先に進む。観光客は引き返す。

 
高くて恐くて味わい深い。田舎吊り橋
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